敗北宣言

私が「5人みんなが大好き」と言うのは、半分ほんとうで、半分嘘だ。

そもそもA.B.C-Zを好きになったのは、いつもむっすりしていると思っていた橋本くんの笑顔に撃ち抜かれたからだった。それからグループのことをもっと知りたいと思って、5人それぞれのことを知って、コンサートや舞台も見に行って、どんどん好きになった。だから私が自らに貼ったラベルは「箱推し」だった。

 

8月終盤、私は一枚だけチケットを握りしめてTDCホールにいた。橋本くんのソロコンサートを見るためだ。

奇しくも、その回はMCで事件が起こった。初夏に週刊誌で報道があったことを受けてか、話が良くない方向に流れ、彼が土下座したのだ。私は目の前で土下座する人を初めて見たし、ましてやアイドルなんてなおさらだった。元からそういった報道には言及をしない組織だって思っていたけれど、本人がそれを猛スピードで突き破ってきたことに驚きを飛び越え、ものすごく清々しかった。

終演後、ざわつく会場を抜けて帰る間、頭にべっとり張り付いたその光景を何度も思い出して考えた。あの状況を避ける方法はいくらでもあっただろう。それでもあの状況を真っ正面から受け止めてしまう素直さが、不器用さが、愛おしくてしょうがないと思った。

不謹慎にもこの一件で橋本くんのことをもっと好きになってしまった。 

 

それから、彼の好きなところをたくさん見つけていった。

びしっと決まる、努力の結晶みたいなダンスが好き。

気持ちを込めて歌っている声が好き。

豊かとは言えない言葉を、気持ちで軽々と飛び越えて伝えてくれるところが好き。

自分の気持ちに嘘がつけないところが好き。

不器用で、まっすぐ生きずにはいられないところが好き。

こちらが送る「好き」よりも早く、何倍もの大きさで愛をくれるところが好き。

相手を全力で受け止めて、許容しようと努力してくれる優しさが好き。

 

ジャニーズを好きになる前からとっくにおたくだったし、自称・ひねくれの、褒められた女の子(という歳でもないのかもしれない)じゃない私は、橋本くんの言葉に何度も救われてしまっている。彼と対峙している私は、なぜか自然と女の子になれている気がした。

 

一方で、これだけしゃべっておいて、橋本くんのことを特別な一人だと思うのには、私はほかの4人が好きすぎるのかもしれないとも思っていた。こうしていろいろ考えている間にも、彼らのことだって以前より確実に好きになっている。コンサートで近くに橋本くんがいても、ガシガシ踊っている遠くのお兄たちに気を取られていたりする。

だから、一人を見つめるという意味で、担当という言葉を背負うことはできないと思ったし、今もあえて避けている。箱推しというラベルをはがしきれない自分がいた。でも、えび座で楽しそうに歌い踊っている橋本くんを見て、ふわっと吹っ切れた。ファンの形だっていろいろあるし、担当の形だってきっといろいろだ。ちょっとずるいかもしれないけれど、最初から箱推しに区切りをつけなくってもよかったのだ。

だから、フォロワーさんから賜った「言葉にしちゃうと楽ですよ」という言葉にかまけて、言ってしまおうと思う。

 

これからも私は、矛盾した気持ちを抱えて5人のことが大好きだと言い続ける。

それでも、やっぱり、橋本くんの背中を全力で押したい。優しさにずっと触れていたい。橋本くんのことが、とても、とても好きだ。